指を曲げ伸ばしするとき、何かを摘まむとき、手先の細かな作業をするとき、「指を動かしづらい」「スムーズに動かない」ということはありませんか?
以下のような症状が現れている場合には、何らかの疾患が原因になっている可能性があります。
- 朝起きたときに指が動きづらい、スムーズに動かない
- 物を摘まむことが難しい、摘まんでもすぐに落としてしまう
- 以前はできた手先を使った細かな作業ができない
歳だから仕方ないと決めつけず、少しでも異常を感じたときにはお早めにご相談ください。
「手や指の動かしづらさ」が伴う可能性のある主な病気
腱や関節による病気
手根管症候群
手首にあり骨・靭帯に囲まれている「手根管」という空間で、正中神経が圧迫され、手や手のしびれ・痛みなどの症状を伴う病気です。
主な原因は、手の酷使です。そのほか、妊娠や更年期に女性ホルモンのバランスが変化することも、発症の原因になると考えられています。
肘部管症候群
肘の内側にある「尺骨神経」を傷め、小指や薬指のしびれ、細かい作業の困難などが生じる病気です。肘を曲げると、症状が強く現れます。放置していると、指を動かす筋肉の痩せ、小指・薬指の変形、握力の低下などが起こります。
外傷だけでなく、変形性関節症、尺骨神経脱臼、ガングリオンなどの腫瘍、こどもの時の骨折による肘の変形、関節リウマチといった疾患が原因になることも少なくありません。
腱鞘炎(ばね指・ドゲルバン病)
筋肉と骨は、「腱」という組織の束でつながれています。「腱鞘炎」とは、腱と腱を包む腱鞘のあいだで炎症が起こっている状態を指します。腱鞘炎は、肩、肘、手首、足首などで起こりますが、このうち手の指の付け根で発生するものを「ばね指」、手首の親指側で発生するものを「ドケルバン病」と言います。いずれも、手の酷使を主な原因として発症します。
ばね指では、伸ばそうとした指が“ばね”のように勢いよく伸びます。一方で、引っ掛かりのあるような伸ばしづらさも見られます。指の関節が拘縮することもあります。
ドケルバン病では、手首の親指側の痛み・腫れが主な症状となります。特に、親指を動かしたときに症状が出やすくなります。
変性性手指関節症
手指の関節の軟骨が擦り減り、炎症とともに痛みや腫れ、こわばりを伴う病気です。
進行すると、指を動かしたときだけでなく、安静にしているときでも痛みが出るようになります。さらに放置していると、指の関節の変形に至ります。
頚椎症
主に加齢を原因として椎間板が変性し、頚椎が変形する病気です。これにより脊髄や神経根が圧迫されると、手足のしびれ、痛み、手のこわばりといった症状が現れます。
また、麻痺が出現し運動機能障害がでることもあります。
全身の病気
指の動かしづらさだけでなく、全身で症状が現れる病気としては、関節リウマチ、強皮症、膠原病、パーキンソン病、神経疾患などが挙げられます。
リウマチ(関節リウマチ)
手指・手首、肘、肩、膝、足首、足指といった関節の炎症とともに、痛み・腫れを伴う病気です。治療をせずに放置していると、関節の変形や破壊が起こり、日常生活に大きな支障をきたします。
変形などの外から見て分かりやすい症状が現れるまでには時間を要しますが、発症する年齢としては30~50代がボリュームゾーンとなります。また、比較的女性に多く見られます。
稀に小児にも発症することがあり、若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)といいます。
初期症状としては、倦怠感や身体の重い感じ、食欲不振、体重減少、微熱などが見られます。炎症の程度が軽いほど完治する可能性も高くなります。症状に気づいたら、早めに受診しましょう。
強皮症
免疫の異常な働きによって全身の血管や皮膚、筋肉、関節などに炎症が起こる「膠原病」の1つです。
皮膚のみに症状が現れる「限局性強皮症」と、他の臓器にも症状が及ぶ「全身性強皮症」に分けられます。
手指の症状としては、手や手指の腫れや痛み、指を曲げたときの皮膚の突っ張りなどが挙げられます。
はっきりとした原因は未だ分かっていませんが、血管障害や免疫異常などが影響しているのではないかと考えられています。
パーキンソン病
何らかの原因によって脳の神経細胞が少なくなり、身体が動かしづらくなる病気です。50~60代での発症が目立ちます。
手足の震えやこわばり、動作緩慢、全身のバランス感覚の低下などが挙げられます。また前兆症状として、嗅覚障害、便秘、抑うつなどが見られることがあります。