腱鞘炎とは?
手や手指を動かす筋肉と骨は、腱によって結ばれています。腱があるために、私たちは手首や手指を曲げ伸ばしできるのです。
腱は、刀の鞘(さや)のようなものに包まれており、この鞘を「腱鞘」と言います。そして「腱鞘炎」とは、手や手首の使い過ぎなどによって、腱と腱鞘のあいだで炎症が起こっている状態を指します。
腱鞘炎は足首や肩、肘などでも起こりますが、特に多いのが、指の付け根で発生する「ばね指」と、手首の親指側で発生する「ドケルパン病」です。
ばねの様に指が勢いよく伸びる「ばね指」
指の付け根で発生する腱鞘炎です。指を伸ばそうとするときに、その指が“ばね”のように勢いよく伸びるために、この名称がついています。すべての手指に起こりうるものですが、中でも親指・中指・薬指で好発します。
放置していると関節が硬くなる「拘縮」が進みます。拘縮は、第二関節で起こることが多くなります。
症状
- 指がばねのように勢いよく伸びる
- 一方で指の伸ばしづらさを感じる
- 指を伸ばすときに引っかかる感じがある
- 指の関節の拘縮
原因
主な原因は、手指の使い過ぎです。腱と腱鞘のあいだに炎症が起こり、これが滑りを悪くします。また、無理に動かそうとすることで炎症が拡大し、症状も悪化します。
女性の場合、妊娠、出産、閉経など、ホルモンバランスが大きく変化するタイミングで発症しやすくなります。
検査と診断
問診、触診の上、超音波検査やレントゲン検査を行い、診断します。
複数指で併発することもあるため、症状がない指についても調べます。
治療
軽度であれば、湿布や塗り薬、温熱療法(希望により体外衝撃波も可能)などの保存的治療を行い、可能な限りの患部の安静に努めます。腱鞘内への局所麻酔・ステロイド注射を行うこともあります。
これらの治療で十分な効果が得られない場合には、手術を検討します。手術では、腱鞘を切開して腱を解放します。手術は局所麻酔で行い、5-10分の手術です。その後、リハビリテーションによる機能回復を図ります。
あわせて、手指の使い過ぎなどを回避するための指導・アドバイスを行います。
親指側の腱鞘炎「ドケルバン病」
手の甲には、何本もの腱が通っています。そのうち、もっとも親指側の腱で起こる腱鞘炎が「ドケルバン病(ドケルバン腱鞘炎/狭窄性腱鞘炎)」です。
症状
- 手首の親指側の痛みや腫れ
- 親指を動かしたときの痛み
原因
スポーツや仕事などで手を酷使することが主な原因となります。
女性の場合、ばね指と同様に、妊娠や出産、閉経など、ホルモンバランスが大きく変化するタイミングで発症しやすい傾向にあります。
検査と診断
問診、フィンケルシュタインテスト(触診)、超音波検査やレントゲン検査を行い、診断します。
フィンケルシュタインテストとは、手首の親指側を押したときの痛みの有無、親指と手首を曲げたときの痛みの変化を調べる触診です。
治療
軽度であれば、湿布や塗り薬、温熱療法などの保存的治療を行います。また、腱鞘内への局所麻酔・ステロイド注射を行うこともあります。
保存的治療で十分な効果が得られなければ、手術を検討します。ばね指に対する手術と同様、腱鞘を切開し、腱を解放する手術が行われます。手術は局所麻酔で行い、10分程度の手術です。その後、リハビリテーションで機能の回復を図ります。
別名「スマホ腱鞘炎」と呼ばれる理由
腱鞘炎(ドケルバン病)の中には、スマートフォンの使用が原因になっていると思われるものが存在します。今や日常生活に欠かせない道具となったスマホも、使い方によっては「手首や手指の酷使」につながってしまします。
片手で持って親指で操作(フリック)するのはごく一般的な光景ですが、これが腱鞘炎の原因となることがあります。スマホに依存しないこと、持ち方を改善することなどで、「スマホ腱鞘炎」を予防しましょう。
片手でスマホを持ち、もう片方の手の指(人差し指)で操作すると、手や手指にかかる負担が軽減されます。その他、スマホ用タッチペンを使用する、タブレット端末やパソコンと併用してスマホを使う時間を短くするなどの対策が考えられます。
スマホ操作に限らず、身体の一部に偏った負担をかけていると、筋肉や関節、腱を酷使することになります。仕事でもスポーツでも、「休む」ことの大切さを、今一度考えてみましょう。
腱鞘炎は放っておくとどうなる?
腱鞘炎を放置していると、手首や手指の関節が拘縮し、硬く、動かしづらくなります。
炎症が拡大したり、無意識に患部をかばうことで痛みが他の部位にまで広がることもあります。
また、進行するほど、保存的治療での改善が難しくなります。日常生活への影響も大きくなっていきますので、症状に気づいたときには、お早めに当院にご相談ください。